自転車☆妄想日記: 3月 2011

2011-03-10

単独じゃないはじめてのツーリングについて③

 三浦の海岸沿いは、南国風の椰子の並木と薄曇りの暗い水と砂浜が続き、シュールな違和感を感じさせる。太平洋側の明るいイメージからはギャップがあった。降ったり止んだりの天気の為、レインコートは着たまま、外は肌寒いにも係わらず、肌着は減量中のボクサーのように汗で濡れていた。

 サイコンを失くしてしまった為、僕が前を引くときは速度が速かったり遅かったりと一定の速度で踏むことが出来ず、トニ山さんは詰まったり遅れたりしていた。そもそも体で速度感をつかんでいるべきなのだろうが、集団時はサイコンで客観的に速度を測ることも必要だと思う。悪いことをしたなあ、と思う反面、やはり一人ではこういったことは気づけないと感じていた。ちなみに、サイコンは先般参加した4Hエンデューロの輪行時、どこかのタイミングで失くしてしまったのだった(この話は又、今度)。

 途中迷って油壺の袋小路に行ってしまったが(その時はトニ山さんのガーミンに助けられた)、何とか三崎港に到着。時間も丁度12時半だったので、昼飯にすることにした。そう、ようやく僕のオーガナイズ能力を発揮する時が来たのだ。

 しかし、良く考えたら三崎港で飯をくったことなど無い。かなり急に決まったことだから、事前調査もしてない。結局、港の周りをあてどなくさ迷う羽目になってしまった。つまり、今日一番の見せ所でこけてしまった、ということだ。結局、港の目立つ寿司屋に入ることにした。

 店に入り、価格を見た。

 僕 「マグロ丼、2000円・・・・・、これは一体?」
 トニ山さん(想像) 「中トロ丼、3500円。・・・・・・・何が起きたっていうんだ?」

 僕はマグロ以外の握り寿司を食べた。トニ山さんは、中トロ丼を食べた。テレビでは、昼のワイドショーがしきりにくっついただの、別れただの、どうでもよいことを放送している。僕らは余り会話せず、食べた。しずかな時間が流れた。トニ山さんはとても勇気があるな、と僕は内心思った。こうして、現地で安くうまいものを食う、というプランは脆くも崩れたのであった。



 ハラも膨れた所で、再出発。今度は三浦半島の西側を回る。葉山・逗子という高級リゾート地を経由して鎌倉、そこから横浜に帰るというルートだ。エネルギーも蓄えたし休んで疲労も回復したから、ガンガン行こう、と思ったもの束の間、葉山辺りで雨が本降りになり始めた。終いには、ブレーキもスベって効かなくなってきてしまった為、近くのファミレスで雨雲が通り過ぎるのを待つことにした。

 僕はパフェを食い、トニ山さんは和風のスイーツを食いながら、ひとしきり昔話に花を咲かせた後、話題は肝心のサイコンとスマートフォンの話に移った。僕はトニ山さん所持のガーミンやエクスペリアでグーグルマップを見て、度肝を抜かれていた。ポケットマップの時代は終わったのだろうか?いや、行く先々で迷うのは、ツーリングの醍醐味である。それをスポイルしてしまっては、いや、その分もっと違う楽しみに(以下略)。雨は止み、僕らは店を出た。

 その後、僕らは大層余裕が無くなり(心も身体も)、鎌倉もスルーして、とにかく家を目指した。もう日が暮れかけてた上、一旦里心がついてしまったら、後はもう消化試合でしかない。トニ山さんはハムがいってしまったようで、特に登りは辛そうだった。僕もハムのダメージはかなりあり、もうトルクを掛けて走ることは出来ないから、回転させて進んだ。

 7時半頃、出発地点に到着。僕らは固く握手をした。自転車はいい、たった一日のツーリングでも、一緒に走った相手を「戦友」にすることが出来る。一人で走っていても、この充実感は中々味わうことは出来ない。僕らは帰路についた。

(完)

 

 



2011-03-08

単独じゃないはじめてのツーリングについて②

 横浜までは第二京浜、そこからは16号線で南下、横須賀・観音崎を経由して三崎港に行くルートだ。30分ごとにトニ山さんと先頭を交代しながら、ペダルを回した。前を引くより、後ろについていくのが何気に辛かった。ハムストリングスは、先週の4Hエンデューロから何故か回復していない(4日以上経過しているのだが)。というか、脚の裏側は一旦ダメージを受けると、中々回復しないのが通例になってきている。やりすぎだろうか、例のアレ

「結構、回せないっす。」

「またあ。」

何度か同じ会話を繰り返した後、気づくと金沢八景を越えていた。いつもと違って、あまりハラは減っていない。有る程度運動強度を一定させると、ハラが減りにくいというのを聞いたことがあるが、本当なのかも知れない。このまま永遠に腹が減らないとしたら、僕は・・・・・。

「ちょっと止まって。」と、トニ山さん。

歩道のガードレールに自転車を寄りかからせて、六角レンチを取り出したトニ山さん。聞くと、ハンドルがずれてきてしまったとの事。ステムを締める時、片締めだったのかもしれない。僕は近くの自販で買った缶コーヒーを飲みながら、昔の思い出を思い返していた。Vブレーキのバナナをはめずに走り出したあの頃のことを。ツーリング中のコーヒーは、トイレが近くなる上に胃がやられやすいので避けるべきなのだが、僕は止められなかった。

辺りを見ると、そこは駅前のようで街道沿いには何軒かの商店があり、わき道には屋根つきの商店街があった(あえてアーケードとは言わない)。16号線は京急線に沿うように作られており、5キロも走らない内に次の駅の駅前についてしまう。時間帯に係わらず、歩道の往来もあるし、電車の本数もかなりあるようだ。要するに、京急沿線というのは、かなり栄えてる地域ということだ。自転車に乗り始めて分かったのが、地方の衰退である。電車の本数が限られる、あるいは廃線になってしまった地域は、駅前から廃れてしまっていた。理由は簡単、住民はマイカーで移動するからだ。そうなると、道には人が殆ど歩かなくなる。そして商店は街道沿いの大手チェーンの巨大店舗とパチンコ屋だけが栄えて、その地域の個人商店は閉店を余儀なくされる。そして、住民はますます電車を使わず、街道沿いの巨大店舗に吸い込まれていく。まさに負の連鎖である。僕は、都心の路線へ直接乗り入れする私鉄のアドバンテージを改めて思った・・・・・・。

そんなことを考えながら、僕はトニ山さんの自転車のハンドルを観察していた。「僕のより、リーチが短くて握りやすそうだ・・・・。」(前述のくだりと全く関係無い感想。)

そんな感じで横須賀までは、あっという間だった。トニ山さんが「三笠公園にいくなう。」というので、そうすることにした。横須賀には何度も自転車で来ているが、観光らしい観光をしたことがない。僕は横須賀に関する少ない知識を絞りだしていった。「タイガー&ドラゴン!タイガー&ドラゴン!」

そうそう、それそれ。

三笠公園は、別にドンツキには無かった(と思う)。この時、初めて三笠というのが戦艦の名前だと知った。金が掛かるので、三笠には乗らなかった。三笠公園は意外に小さかった。しばしの休息の後、僕らは出発した。

空は薄曇り、小雨が降ったりやんだりして蒸し暑かった。僕はレインコートを着たり脱いだりと忙しいかった。トニ山さんは、ロング慣れしていない、という割りにはペダリングは一定で、疲れているのかどうなのか、よくわからない。観音崎までの道程は海沿いが多く、信号が割りと少ない。僕らはひたすらペダルを回して進んだ。













2011-03-03

単独じゃないはじめてのツーリングについて①

「自転車は一人で乗るもんだ!」

などと粋がって、去年は一人で能登半島まで一週間かけて行ってみたり、チームで楽しそうに走る人達を尻目に一人でサーキットを周回し続けたりしてきたものの、先般参加した4Hエンデューロでは集団に全くのれずに撃沈。さすがに「このままで、僕は速くなるのだろうか?」などと多少の不安が芽生えつつあった一昨日、「明日は有給休暇なう。」とつぶやいた所、ロード乗りの唯一の友人から「明日、一緒に走ろうなう。」などとリツイートが(あったかどうか、・・・・・なう)。

こうして、僕は平日にとった有給休暇を過ごすことになった、まさに、ツーリングは突然に。


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3/2(水)、AM 8:00、 第二京浜と呑川の交差するとこに集合。これが前日決まった唯一の決め事だった。僕は当日、カッパをリュックに詰めて、集合場所に颯爽と出発した。勿論、遅刻だ。礼儀を重んじる僕は、出発前に「遅れます」と一本のメールを送信するのを忘れなかった。

かくして、友人は既に其処にいた。この友人は中学の頃の同級生で、SNSなどで交流はあったものの、実は中学以来の邂逅であった。このブログ内では、友人を通称「トニ山さん」ということにしておく。

劇的再会、のはずだったが、ロクに話もせず走り始めた。どうせ途中でヘトヘトに疲れて、休憩しながら話す機会はある(そしてそれは実際、予想以上にあった)。友人が、「丸刈推奨の行き先で行こう。(要旨)」とのことだったから、最近お気に入りの「三浦半島一周」コースを選ぶことにした。一人ツーリングでは、ロクに食わないことが多いが、友人がいるということは当然その辺りもオーガナイズしてしかるべきである。そう考えると、行き先にグルメは欠かせない。更に自転車乗りが必要とする良質なタンパク質は魚介類である・・・・・・。

・・・・・・・港だ!

三浦半島を選んだ理由はズバリ、それだった。僕はこの小旅行が素晴らしいものになるものと、胸をふくらませていた、この時までは・・・・・・(つづく)。

(この最後のフリは通常、なんらかしらのアクシデントを想起させる時に使うものですが、今回は使いたいから使っただけです、念のため)